サナシオ・インテリジェンスレポート ~日本企業のパラダイム・チェンジ進行中~
- 2013.11.07
- サナシオからのお知らせ
このレポートは、調査目的で情報を収集し解析したレポートではありません。
サナシオの日常活動の中で得た情報や報告などを基に書かれたものです。
従って他の情報と同じように一つの参考意見として読んでいただければ幸いです。
『日本企業のパラダイム・チェンジ進行中』
先日、学会の出席を兼ねて、ある方の紹介があってコンサルティング会社、M 社長のお話を個人的に伺う機会を得た。コンサルタントというとマーケッティングから人事まで、会社のあらゆる事象についてコンサルトしてくれそうな感じがあるが、彼はご自分で専門は人事・給与・コーチング等の分野であるといわれていた。お会いすると素晴らしく聡明で、どちらかというとスポーツマンの大学教授のような雰囲気の方であった。
今回、全く畑違いの彼にお会いしてお話しを伺いたかったのは、日本の会社が大きなパラダイム・チェンジの最中にあり、その事について自分の考えが正しいのかどうかを知りたいという事にあった。彼との会話の中で、自分の考えている事が正しいと確信するに至った。
さて、このパラダイム・チェンジの最も大きな要因はグローバリゼーションであり、ヒト・モノ・カネが国境を越えて行き来するようになり、また弱肉強食の新自由主義が主流になりつつある事による。その中で、日本の大企業も生き残りをかけて、今までは考えられなかったようなパラダイム・チェンジが起きているのである。
以下に述べる事は、彼との意見交換の中で得た私の考えである事に留意されたい。
今までは良い大学を出て、良い企業に就職すれば終身雇用が約束され、OJT(on the job training)でトレーニングを受け、同じ釜の飯を食い、同じ価値観を共有し、会社も円安の助けもあり、高品質の製品を国内で作り出して世界中に輸出する事で成長し、雇用も安定していた。
しかし時代は変わり、今は世界中で製品を作り、世界中で販売し、世界中でサービスを提供しなければならなくなった。世界で勝負する為には外国人を含め、全く価値観の違った人々を束ねマネージメントする事が必要になる。
つまり完全にドメスッティックな牧歌的な時代は過ぎ去り、国内外を問わず、価値観の違う様々の人材を採用し、1つの目標に向かわせるという新しいパラダイムの時代になったという事がいえる。
彼の著書の中にあるように、これからは人材採用に当たっては、何らかのスペシャリストである事が求められ、中途採用が一般的になるだろう。新卒の人々がどうなるかといえば、大半の企業では採用が控えられる。優秀な人材は、例えばリクルートの様な人材輩出会社で鍛えなおされ、そこで生き抜くか、転出して独立するか、踏み台としてキャリアアップしてくか、直接海外に活躍の場を求めるかになる。それ以外の新卒者は、余り成長が期待できない完全にドメスッティクな企業に就職する事になるだろう。
役員の中途採用もどんどん増加し、海外の企業を買収するM&Aも頻繁におこなわれるようになる。しかし企業の暗黙知というか言葉では表せない企業価値観の共有がなければ、今後、企業として存続してゆく事は出来ない。例えば安い製品を沢山作るのか、高品質を求めるのか、その事だけでも価値観は180度違ってくる。
M社長 は著書の中で、企業内大学、つまり企業の中に大学を作り、役員が忙しい中、自ら教鞭をとって企業の中の価値観を共有する事の重要性を説いているが、まさにこの事が、今後の企業の発展に大きくかかわる事になってくる。またそれに付随して人事評価の変更伴わなければ、企業改革は一時的なものになり失敗してしまう事になる。今、日本の大企業はその分岐点にある。
また無期の雇用を有期にしようとう動きがみられる。多分、海外の低コストの人件費と戦ってゆく為には、どうしても必要な事なので、そのような方向に進んでゆく事は確かだが、反対に日本の人口減少に対応するためには、定年は有名無実となり、高齢者も女性も働かなければならない時代になってくるだろう。
この様なパラダイム・チェンジの中、私達、産業医はどのようなスタンスで、この変化に臨めば良いのだろうか。その点について明確に言える事は、「牧歌的な時代に正しかった事が正しくなくなるという事もある」という事実を理解する事である。それ以上の事は、また別の機会で述べる事にしたい。
サナシオ代表 日笠 豊